Interview

2009年 キャリア入社
情報学部 情報学科 卒業

アルゴリズム開発エンジニア

スマートフォンによる位置測位精度向上に関する研究開発に従事。
GPSや各種センサーを利用した、車や徒歩など様々な移動手段のナビゲーションに最適な測位技術をサービスに投入している。

ナビタイムジャパンのサービスを支える「位置の専門家」

-まず「航法」とご自身の仕事について教えてください。

「航法」とは、ナビゲーションシステムにおいて、自身の位置を正しく特定する技術のことを言います。それは車での移動だけではなく、徒歩や、自転車やバイクなど、当社が提供するあらゆるサービスにおいて適用される技術であり、ナビゲーションを実現する上での屋台骨とも言える重要なものです。どんなに良いナビゲーション機能が搭載されていても、位置を正しく取ることができなければ、何の意味も成しません。
「こんなナビゲーションができるといいなぁ」というアイデアは社内でも数多く出ますが、実現するためには「位置精度が高ければ」という条件が必ずつきまといます。この課題を「位置の専門家」としてクリアするために、日々研究開発しています。

-「航法」の研究開発に取り組む上での難しさは何ですか。

車向けのナビを例にお話しします。
数年前から、インダッシュナビ※1やPND※2などに代わり、スマートフォンを使ったナビゲーションサービスを利用するユーザーが増えてきていますが、「自車位置精度」という面では、車から取れる車速パルスなどの情報があるため、インダッシュナビが優位でした。

しかしユーザーからは、インダッシュナビと遜色ない自車位置精度を求められることが多いです。この要求を満たす性能を実現するのが大変苦労する点です。車から取れる情報を活用して自車位置精度を上げていたものを、スマートフォンから取れる情報のみで同等の性能に仕上げなければならないからです。
現在はスマートフォンが持つさまざまなセンサーなどを駆使してそれが実現できるよう、まったく新しい技術を試行錯誤し、最適解を模索している最中です。

またスマートフォンならではの難しさという点では、特にAndroid OSを搭載した端末に言えることですが、非常に多くの機種(ある調査によると4,000機種にものぼる)が出ており、機種ごとにスマートフォンから分かる情報に個体差があります。そのため、これら全ての機種に対して、自車位置精度を上げるように対応するのも、非常に骨が折れることですが、同時にこの仕事の面白さの一つです。

※1 ダッシュボードの中に埋め込まれた形のカーナビゲーション
※2 Portable Navigation Deviceの略で持ち運びや取り付けが簡単にできるカーナビゲーション専用端末

技術の進化と今後のナビゲーションサービス

-今後ナビゲーションサービスはどのように進化していくと思われますか。

ナビタイムジャパンは「ガラケー」と呼ばれた携帯電話端末を使ったナビゲーションサービスの実現で、業界の先駆者となりましたが、今ではスマートフォンを使ったナビゲーション自体、珍しいものではなくなりました。
そして今後は、さらなるデバイスの進化によって、ナビゲーションサービスの在り方も大きく変わってくると思います。現在ナビゲーション業界では、以下のような技術が開発途中であったり、既にサービスとして実現したりしています。

・ウェアラブルデバイスを用いたナビゲーション
・仮想現実(AR)の技術を使用したナビゲーション
・デバイスと対話しながら操作するナビゲーション
(当社の『カーナビタイム』に搭載されている「ボイスコントロール」機能はこれにあたります)
・車々間※3および歩車間※4通信を使った、車や歩行者の安全を支援するナビゲーション
・自動運転車のような、ユーザーに意識をさせないナビゲーション

また屋外だけでなく、駅やショッピングモールといった施設の中などでの屋内ナビゲーションも、2020年の東京オリンピック招致が決定したことにより、技術開発が加速しています。
ここに挙げたような「次世代のナビゲーション技術」は、これまでのように目的地へ案内するだけでなく、さまざまな利用シーンに適応したナビゲーションサービスとして、発展していく可能性があると考えています。今後もユーザーの課題や目的に適したナビゲーション技術と、それと対になるサービスを見極め、業界の先駆者となっていきたいです。

※3 自動車と自動車を通信でつなぐこと
※4 歩行者と自動車を通信でつなぐこと

何を創るか、から考えるから本当の開発力が身につく

-転職してナビタイムジャパンに入社されたからこそ感じる「他社との違い」はありますか。

一番の大きな違いは、全ての技術やサービスの開発を自社で行っている点です。
モバイル端末やWebを通してサービスを提供している企業は数多くありますが、実は「コアとなる技術」の開発を外注し、別の企業がそれを担うことがよくあるのが、日本のIT企業の特徴です。開発を外部に委託した場合、事前に開発内容を契約で決めるため、それ以上にはなりませんが、当社のように社内で完結した環境で開発をすることで、より柔軟でスピーディな対応が可能になりますし、単にクライアントの希望通りにものが作れるというだけでなく、「何を創るか、から考える」という本質的な意味での「開発力」をつけていくことができるのではないかと思います。

また、当社がもつコア技術は私が携わっている「航法」だけでなく他にもたくさんありますので、自分の知らなかった技術分野についても幅広く知っていくことができるのも良いところだと思います。新しい技術を学ぶことで出てくるアイデアもあると思いますので、社内での技術交流も活発に行われています。

ですので、私のようにコア技術に携わるエンジニアが研究開発に取り組むだけではなく、その先にいるユーザーを意識して企画をしていくことが求められるのも、当社ならではだと思います。

-その他の面での違いはありますか。

日本のIT企業に多いSIer※5の多くは、開発案件を「受託」し、注文に合わせてシステム構築をすることで対価を得ていますが、当社の場合は市場で評価されるものを「企画」して開発していくことが、エンジニア一人ひとりのレベルで求められます。

自分たち自身で企画し、開発したものが市場に出る。そしてユーザーに評価されて会社の利益につながっていく。自身の行動が会社を動かし、創り上げていく力になることを、技術やサービスを通じて経験できるのは、ナビタイムジャパンならではだと思います。

※5 System Integrator=システムインテグレーターの略